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原油を蒸留すると残る黒いもの

原油価格の高騰で電力料金値上げ、光熱費が上がって家計大打撃!というニュース、目にしますよね。
この原油、タンカーで石油精製施設に運び込まれると、加熱炉で350℃に熱せられ、沸点が低い順に、以下の5つの石油製品に生まれ変わります。
1.石油ガス(LPガス)
2.ガソリン
3.灯油
4.軽油
5.重油、土瀝青
つまり、原油を蒸留して、最後に残るのが「土瀝青」です。
さて、何か分かりましたか?
古代から接着剤や防水材として使われていた!

実はこの土瀝青、現代では石油から燃料を製造する過程で生まれる製品ですが、それ以外に地中から染み出てくる、天然の土瀝青が存在します。この天然の土瀝青が、古代から利用されてきたことが、遺跡の調査で明らかになっています。
例えば、メソポタミア文明やインダス文明の遺跡では、建物の防水に。また、古代ギリシアでは、レンガが倒れないように固定する接着剤として使われていました。
ちなみにこの名称は、ギリシア語のa-(~でない)+sphállesthal(倒れる)が変化し、「堅くして確実に固定する」が語源になったと言われています。
日本でも、東北の日本海側で天然の土瀝青がとれていて、秋田や青森の縄文時代の遺跡から、天然の土瀝青が付着した矢尻や、土瀝青で補修された土器、土偶が出土しています。
さらに、日本に伝存する最も古い歴史書のひとつ『日本書紀』には、天智7年(668年)、天智天皇の即位式に「燃える土」として献上されたとの記録も!
明治以降は、建築に土木に大谷級の大活躍

正解は「アスファルト」です。
江戸時代には、橋、倉庫、貯水池の防水材などに使用されていたという記録があります。しかし、メジャー級の活躍をし始めるのは明治以降。橋や道路の建設に欠かせない素材になっていきます。
さらに建築の分野では、マンションや商業ビルの平らな屋根の防水でも活躍。また、住宅でも、一般住宅の屋根の外壁の下地防水工事に、アスファルトを塗る事例が増えていきます。
現代で、そのような使い方は少なくなりましたが、不織布・布・紙などにアスファルトを浸透させてシート状にした「アスファルトルーフィング」が、多くの建築現場で使われています。今も建物内への雨水の浸入を防ぐ一役をになっているのです。
歴史を越え、今も道路工事といった「土木」と、ビルや住宅の「建築」の2つの分野で頑張ってくれている土瀝青。大谷選手の二刀流並みの活躍と言ってもいいかも知れません。
写真:PIXTA