TOP よみもの 連載 「螻蛄羽」読める?家からちょっと飛び出して雨漏りや外壁の汚れを防いでくれます

「螻蛄羽」読める?家からちょっと飛び出して雨漏りや外壁の汚れを防いでくれます

漢字を見ても何のことか想像もつかない人、多いと思います。虫偏のついている漢字2文字は、昆虫の名前です。その昆虫の羽みたいということで名づけられた家の「ある部分」のことです。家の上のほうで雨漏りしないよう、外壁が汚れないよう頑張ってくれています。さて何と読むでしょう?

螻蛄はコオロギの仲間、童謡の歌詞にも登場

まずは、虫偏のこの2文字の正体を明らかにしましょう。

螻蛄

螻蛄はバッタ目に属する昆虫です。生物学的にはコオロギに近く、人間にも縁の深い昆虫です。

土を掘るのが得意で、一生のほとんどを土の中で生活しています。土を掘る前足をあげている姿が、お手上げだぁ!という風に見えるので、賭け事ですっからかんになったことを、この昆虫の名前で表現されることも。

手のひらを太陽に

小学校の合唱の定番でも、以下のようなフレーズで登場します。

「ミミズだって、●●●だって、アメンボだって♫
みんなみんな生きているんだ友だちなんだ~」
(『手のひらを太陽に』作詞:やなせたかし)

螻蛄の羽に似ていることから名づけられた屋根の出っ張りのこと

螻蛄羽

正解は「けらば」です。

屋根の外壁から飛び出している部分で、横の斜めの部分を螻蛄羽といいます。ちなみに屋根の下の部分で外壁から飛び出している部分は「軒(のき)」。こちらは知っている方も多いと思います。

オケラになる

では、なぜ切妻や片流れの屋根の斜めの部分の飛び出し部分を、こんな難しい漢字があてられたかというと、螻蛄がとても身近な生き物だったから(「虫けら」とか、「オケラになった」という言葉の由来もこの螻蛄だといわれています)。大体、名前を呼ぶときに「お」をつけること自体、親しみの現れですよね。

この螻蛄の成虫には前羽、後羽があります。前と後ろの羽の長さが異なっていて、短い前羽が似ていると名づけられたといわれています。

昔の建築の螻蛄羽

古来、日本の家は螻蛄羽をつけることで、雨漏りや外壁の汚れや劣化を防いてきました。また、室内への日射を調整する役目もあり、なくてはならない存在でした。

最近の住宅

最近の住宅密集地では、隣地との間隔を取るために、螻蛄羽をつくらない家も見られます。すっきりとした外観にしたいと、あえて螻蛄羽も軒もつくらない家も増えてきました。

たしかに昔に比べると、建材の性能格段にアップ。外壁材も汚れにくくなり、屋根との隙間から雨漏りが起こることは少なくなりました。しかし、日本の家と暮らしを培ってきた知恵。機能的にも意味のある部分であることは変わりません。

画像/PIXTA(漢字画像を除く)

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書き手:鈴懸

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