TOP よみもの 連載 「指矩」読める?大工さん必携の、これがないと家が建たないと言われていた道具

「指矩」読める?大工さん必携の、これがないと家が建たないと言われていた道具

指(ゆび)に矩。この矩という字は、「まっすぐに線を引く定規」の意味です。今から1400年前、歴史の教科書でもおなじみの聖徳太子が、大工さんに広めたと伝えられています。法隆寺が素晴らしい建築物なのは指矩のお陰かも…。これがないと家が建たない!と言われ続けてきたすごい道具です。さて何と読むでしょう?

指矩を日本に広めたのは聖徳太子!?

聖徳太子

まずは指矩の歴史をひもといてみましょう。

中国の春秋戦国時代に魯班と言う人が発明したといわれています。この魯班という人、ほかにも家づくりに欠かせない鋸(ノコギリ)や鉋(カンナ)なども発明したと伝わっていて、中国では建築の祖師として祭祀されています。

法隆寺

そして、この指矩を日本で広めたと言われているが聖徳太子です。聖徳太子は、大工を集めて指矩の使い方を教え、当時建立された法隆寺の技術の高さは、指矩があったからこそとも言われています。

ちなみに教科書では、あまり出てきませんでしたが、「大工の神様」として信仰され、全国の神社に指矩を持った聖徳太子像が祭られてます。

建築現場で大工さんが使ってる、銀色に光るニクイやつ

指矩

今回はズバリ実物を見せちゃいます。この大工さんが使っている銀色に光るL字形の定規が「指矩」。見たことありませんか?

指矩を使っているところ

長い定規と短い定規が合体したような形状。実際、普通の定規のように「線を引く(下書き)」「寸法を測る」「直角を出す」といったことも使う、大工さんの必携アイテムです。

ただ、使い方はこれだけにとどまりません。実は、もっとすごい使い方も!

平方根に円周率!これは電卓よりすごいかも!

指矩とトンカチ

正解は「さしがね」です。

この「指矩」、裏と表に目盛りがついています。裏側についている目盛りは、内側と外側に「角目」と「丸目」の2つ。これがとにかくすごい!

丸太の断面

「角目」は2の平方根=1.4142…を掛けたもの。中学で習った直角二等辺三角形の1:1:√2に対応。これで丸材(丸太)から取れる角材の最大寸法が一発で出せます。

さらに屋根などの勾配を算出し、材の加工をするときに役立つ使い方も可能。電卓がなかった時代には、まさに魔法の道具です。

もう1つの目盛り「丸目」は表目に円周率=3.1415…が掛けてあります。ですから丸太の直径を丸目で測れば、一発でその丸太の円周の長さが分かるのです。

三平方の定理

平方根に、円周率に、三平方の定理!すごいですよね。

指矩があったから、奈良や京都の世界文化遺産が、美しいフォルムを実現できたと言っても過言ではありません。また、指矩から導き出された数値の正確さから1000年以上倒れることなく立っているとも!

私たちが1000年以上前に立てられた名建築を見ることができるのは、指矩のお陰と言っても過言ではありません。

そして、これから建てる新しい家にも、指矩が活躍しているかも!

画像/PIXTA(漢字画像を除く)

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書き手:鈴懸

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