目次
一枚の金属の板を職人が叩いて生み出す芸術品

例えば初詣に神社に行ったとき、本殿の朱塗りの欄干や柱の上のほうに神々しい文様を施したものを見たことありませんか?お祭りで町内を練り歩くお神輿にも付いています。

大河ドラマとか時代劇でも大名や武士の家の箪笥(箪笥)や長持(ながもち)に金属でつくられた美しい文様が付いているのを見ているかもしれません。
あの職人が一枚の金属の板材を、槌(つち)と鏨(たがね)を使って生み出す装飾金具を錺といいます。
昔の建物では釘隠し(くぎかくし)としても活躍

正解は「かざり」です。
昔は神社仏閣だけでなく、一般の家でも釘隠しとして活躍していました。
釘隠しとは、日本の伝統的な建築で長押(なげし※柱と柱を水平につないでいる部材)や扉に打ったクギを隠すために付けられたもの。金属製のものは、これも錺です。

今の家では使われることは少ないですが、茶室をつくったり、数寄屋風の住宅を建てるときには活躍しています。インテリアとしても人気の仙台箪笥に付いている金属の飾りもそうです。
じゃあ、「錺」と「飾(り)」、どちらも「かざり」と読むけどどう違うの?という素朴な疑問がわいてきますよね。
意味自体はほぼ同じです。金属の飾りが錺というのですが、飾りと書いても間違いではありません。
「飾」という漢字があるのに日本独自の漢字として生まれ、使い続けられていること、ちょっと素敵だと思いませんか?
東京には「錺かんざし博物館」という小さな博物館も!

錺は家にまつわる漢字と言いましたが。錺かんざしというものがあります。時代劇で町娘や花魁(おいらん)が髪に差している、あのかんざしです。
東京の墨田区にある「錺かんざし博物館」では、さまざまな時代の錺かんざしを展示しています。そして、今も歌舞伎や日本舞踊といった演芸用に錺かんざしを制作している人も。家だけでなく、伝統のなかで錺は今も息づいています。
画像/PIXTA(漢字画像を除く)