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LDKの漆喰や珪藻土の壁も、これかがないときれいに塗れない

無垢材のフローリングに、漆喰(しっくい)や珪藻土(けいそうど)の壁。最近は、そんな自然素材にこだわった家が人気です。この壁を塗るのに使うのが鏝です。

もともと雨が多く湿度の高い日本では、調湿性のある土や漆喰、和紙がよく使われてきました。この壁を鏝を使って塗り上げる職人のことを左官(さかん)といい、古くから培われてきた技術です。
2020年には「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」として、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。
お好み焼きをひっくり返したり、髪を整えたり…鏝は身近な存在

金属をくっつけるための「半田鏝」、髪のスタイリングで使う「ヘアアイロン」も鏝の仲間です。お好み焼きをひっくり返す道具も、鏝。まだまだあります。苗の植え替えに使う、小さなシャベルも鏝と言ったりします。
鏝のつくりの部分、「曼」という字に「長い」「広がる」「ひっぱる」といった意味があります。その意味では、細長い鰻(ウナギ)、長く伸びていく蔓(つる)という字が似ているのも分かりますね。
また、髪の毛をひっぱってストレートにしたり、布を広げて平らにしたりするアイロンを、鏝という字を使った理由も理解できるのではないでしょうか。そして建築で使う鏝と同じ仲間と言われても、不思議なことではありません。
左官職人が使う鏝は、家づくりのいろんな場所で活躍!
正解は「コテ」です。
話を家づくりの現場で活躍する、鏝(左官鏝)に話を戻しましょう。
左官鏝には、非常に多くの種類があります。いくつか挙げると…。
仕上げ鏝、中塗鏝:もっとも一般的な五角形の鏝で、漆喰や珪藻土、モルタルなどを塗るときに使います。

レンガ鏝:桃型の鏝で、レンガやブロックを積むときに使います。
ブロック鏝:細い三角形で、ブロックの穴にモルタルを流し入れるときに使います。
櫛目(くしめ)鏝:櫛のようなギザギザがついた鏝で、タイルを貼る前に、接着剤やモルタルを塗るのに使います。さらに櫛目の細かいものは、珪藻土などの壁の模様づけに。

土間鏝:長方形のものが一般的で、名前のとおり土間や、セメントを流した玄関アプローチといった場所を、平らに仕上げるときに使います。
鏝は、室内の壁、外壁、タイルを貼る水回り、土間、そしてブロックやレンガを積む外回り…、家づくりのさまざまな場所で、なくてはならない道具です。
画像/PIXTA(漢字画像を除く)