穴掘り三年、鋸五年、墨かけ八年、研ぎ一生
大工さんは、ひとつひとつの道具を使いこなす技術を、時間をかけて習得していきます。そして、一人前に使いこなせるようになるまで、どのくらい時間がかかるかという意味で、昔から言われてきたのが「穴掘り三年、鋸五年、墨かけ八年、研ぎ一生」※です。
ノコギリ(鋸)を使いこなせるようになるには5年、大きな木材から、小材を切り取るために、鋸を入れる場所を墨で記すこと(墨かけ)がちゃんとできるようになるのには8年かかる。そしてカンナ(鉋)の刃を研ぎ、納得のいくように木材を削るには一生かかるという意味です。
で、今回の難読漢字「鑿」で、しっかりと穴を掘れるようになるには、3年かかるという意味です。
ほかの道具を使いこなすのと比べれば、短い気もしますが、それでも3年!修行の大変さがうかがわれますね。
鑿は、ノコギリ、カンナと並ぶ木材加工の三大大工道具
正解は「ノミ」です。
電動工具での切断や表面仕上げ、金属金具やクギを使って接続させるのが、ごく普通の時代になり、状況が変わりましたが、電動工具もなく、クギも高価だった時代は、おもにノミ(鑿)、ノコギリ、カンナの3つの道具を使って家を建てていました。
木材を切るノコギリ、木の表面をツルツルに仕上げるカンナが重要なことは分かりますが、なぜ、ノミが同じくらい重要とされていたのでしょう?
それは、数千年も前から、木材同士をつなぐ方法として、一方の木に穴をあけ、もう一方の木の先を、穴の大きさに削って、差し込むという手法が行われてきたからです。
穴を「ほぞ穴」、穴に差し込む部分を「ほぞ」といい、この手法を「ほぞ継ぎ(ほぞ接ぎ)」といいます。
奈良の法隆寺をはじめ、1000年以上倒れない建築物を今も目にすることができるのは、このノミ(鑿)のお陰と言えるかもしれません。
そして、今も、その技術は、大工さんの間で受け継がれています。
※「鋸、鑿三年、研ぎ一生」という言い方もあります
画像/PIXTA(漢字画像を除く)