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昔は「杮葺き」の屋根の家が多かった!

今でこそ、金属サイディングや、スレート、瓦(かわら)を葺いた屋根が一般的です。しかし、昔は高価な瓦は、一般の住宅ではなかなか葺けませんでした。金属サイディングに近いと銅板葺きも、お城や神社では使われていましたがさらに高価!
農村部では萱葺き(かやぶき)の家、町人の住む都市部では、板葺き(いたぶき)の家が一般的でした。

この板葺きのなかでも、木の薄板を幾重にも重ねて葺くものを「杮葺き」と言います。
曲線的で優美な屋根は、今でも、京都や奈良の寺社仏閣を巡ると見ることができます。きっと旅先で見たことがあるはずです。
昔は家が出来上がって、これを屋根から払ったら完成だった

屋根を葺き終えて、あとは屋根に残っている「杮」を払い落せば完成!床屋さん帰りのような、さっぱりとして美しい屋根が現れます。
ここから「杮落とし」という言葉が生まれました。「さあ、新しい建物ができましたよ!」という意味です。
実は今でもこの言葉、意外なところで使われます。それは劇場。新たに劇場がオープンした、もしくは改築工事で生まれ変わった直後の公演を、「杮落とし公演」と銘打って、大々的に宣伝することがあります。
記憶に新しいところでは、建築家・隈研吾氏によって建て替えられた歌舞伎座。生まれ変わった歌舞伎座に歌舞伎界のスター勢ぞろいして、1年間にわたり盛大に杮落とし公演がとり行われました。
「杮」とは、木を削ったときに出た木片のこと!

正解は「こけら」です。
デジタル大辞泉には以下の2つの意味が紹介されています。
- 木材を削るときに出る細片。削りクズ。こっぱ。
- 「杮板(こけらいた)」の略。
建築中には木を切ったり削ったりします。ですから削りクズなどの細片が出ます。これが「杮」。本来の、「杮落とし」は、この1を払い落すという意味です。
そして2が、最初に紹介した「杮葺き(こけらぶき)」の杮。つまり「薄い木の板(杮板)」のこと。
余談ですが、「杮落し(こけらおとし)」は、本来は木造の屋根から、削りクズを貼り落とすこと。ですから、RC造のビルや、屋根のないスタジアムのお披露目で使うのは、少し違います。
とはいえおめでたい気分になれる言葉。これからも残って欲しいものです。
画像/PIXTA(漢字画像を除く)